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嫉妬 [小説]


 

 

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「悪い、仕事でそっち行けなくなった。じゃ、そういうことで」

それは珍しくも何ともない展開だったが、彼と付き合って1年たっても私はまだそれに慣れないでいた。




約束をすっぽかされた夜はいつも朝まで眠れない。



怒りとも違う何か虚無的な感情が私に眠りに落とさせない。



そのとき、メールの着信音が鳴った。



がばっと起き上がり、メールの表示を見つめると、そこには昔少しだけ付き合ったことのある男の名前が記されていた。



私は拍子抜けしたが、とりあえず内容だけ見ることにした。



メールには「久しぶり。元気? もし今夜暇だったら飲みにでも行かない?」とだけあった。



私はケータイを下唇に当てて少し考えた。


よく考えてみるとこの男となぜ別れたのかわからない。


別に何の過不足もない男だったのに。



私はケイタイのボタンに指を走らせた。




「ごめんなさい。今夜は彼氏が遊びに来るから出られないの。また今度誘ってね」


別れる理由すらないほど思い入れのなかった男と飲みに行くより、ひとりで過ごしていた方がいい。




彼のいないこの夜を



この甘い不在を。






タグ:嫉妬 小説
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