透明人間 [小説]
博士は興奮していた。
長年の研究がついに実を結んだのだ。
世界で初めて、物質を透明にする薬を開発した研究者として、ノーベル賞も確実だろう。
いや、それよりもまず・・・
博士は考えるより早く、透明人間の薬を飲み下した。
衣類をすべて脱ぐ。
まったく見えない。
透明だ。
大成功だ!
博士は早速、街へ飛び出した。
セクシーな女性のミニスカートをめくってはしゃぐ。
女性は突風だと思い込んでキャッと言いながらスカートを押さえる。
誰も透明人間だなんて夢にも思わない。
博士の行動はエスカレートする。
理性が透明になって本能がむき出しになったみたいに。
人間の気配がするのに、誰もいないのだ。
博士はやりたい放題。
しかし・・・
「なによアンタ!」
女性に思いっきり殴られる。
「さっきあたしの胸を触ったのはあんたね!」
今度は別の女性に殴られる。
先ほどイタズラしてきた女性たちが一斉に集まってくる。
一斉に殴られる。
こんなはずでは・・・
博士はなんとか逃げ出し、研究室へと戻った。
どうしてバレたんだろう?
博士は鏡を見た。
そうか、道理で・・・
博士の身体のラインに沿って、すすのような汚れが付着していた。
大気汚染の進行した現代社会においては、透明人間になるのはもはや不可能だった。。
2015-06-03 02:50
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by Shela (2018-01-21 08:06)