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監獄 [小説]


 

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例えばここが箱庭だったとする。


箱庭は何かしら欠陥を抱えた者たちが隔離される、ある種の「監獄」



欠陥者達には理性も備わっているし、物事を思考することもできる。

表向きには、一般人となんらかわらない、「人間」達だ。



それでもやはり、欠陥というものはみえてくる。



いや、そもそも欠陥という表現は相応しくない。


この箱庭にいる人間はいずれにしても、たった一つだけのものを持ち合わせいなかったり、どこかに落としたりしてきた者の集まりだ。


悲しみの欠落、喜びの欠落、概念の欠如、渇望失望喪失。

彼らは普通の人間が持っているものをひとつふたつ持っていなかっただけで、この監獄に幽閉されてしまった。


そこに狂いなどあっただろうか。


あえて狂いを示すならば、彼らを閉じ込めた誰かに他ならない。


ならば真に欠陥を抱えているのは、我らヒトを統治するヒトではないだろうか。


否、そこに欠陥はない。


彼ら統治者はただ一様に恐れているだけに過ぎない。


檻の中の猛獣を、ヒトで溢れかえる街に解き放つ馬鹿などいないだろう。


そう、彼らは実に立派に統治している。


「では、果たして誰が欠陥を抱えている?」

その問いに答えるものは誰もいない。


元より答えなどない。

 その全てが矛盾している故に。


挙がる答えは全て正解で、また間違いでしかないのだから。






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