エコロジー [小説]
ある研究者は思いついた。
絶対に世の中にゴミが散乱せず、世界中がクリーンでいられる方法を。
男はそれを本に著すことにした。
発売前から大々的に宣伝をし、テレビでもその本の大体の内容を説明した。
日本では、幾らか名のある研究者であったので、多くの人が注目をした。
最近の若者の間では、エコに関する関心が高まっているようで、
テレビを見た視聴者の若いのから、幾らか反響の電話があったし、書店には予約が入りはじめていた。
街中の広告には、「日本から世界へひろめるエコ」といった具合の安っぽい文句がでかでかとあふれている。
数日後、本が発売となった。
街をあるけば、大概の人が同じ本を読んでいる。
電車の中では、本を持った全く違う年齢層の人々が議論を熱く繰り広げている。
いままで見られなかった光景。
日本人どうしの関わり合いを増やす手伝いとなった。
ある政治家は「本が大量に売れ経済が幾らか潤った。」と言った。
例の著者は高級車を乗り回し、大きな家を建てた。
エコ御殿ともいわれた。
なにもかもが日本のなかで上手くいっていた。
アマゾンの密林にて。
「なぁ、最近、木の伐採量が多くないか。」
「なんでも、ニホンとかいう国で本が売れているらしい。」
現実はいつも遠い所にあるものだ。
2015-06-16 01:04
nice!(0)
コメント(0)
トラックバック(0)
コメント 0