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役所仕事 [小説]


 

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一日の終わりには、あの人の所へ印をもらいに行く。



「今晩は」



「今晩は、いらっしゃい」


と私たちはいつもの挨拶を交わす。


あの人は「お茶はいかが?」と勧めてくれる。


私が眠れなくなるといけないからと、それは決まって焙じたものだ。


少し世間話などをした後で、私たちは姿勢を正し、小さなテーブルを挟んで型通りのやり取りを始める。



「私は、今日も一日、確かに生きて存在してたんでしょうか?」

申し訳ないような気持ちで、私が気まずい質問を切り出す。



「ええ、もちろん」

と、あの人はきっと何気なくそう言って、私の手帳の上に顔をふせ。


力の限りを込めて

念入りに

慎重に

でも向きなんかにはあまり頓着なく、

しっかりと今日の印を押してくれる。


「はい、おしまい」

あの人は顔を上げ、無邪気な表情で手帳を差し出し。



「昨日も一昨日も今日も、あなたは確かにいましたよ。そして明日も明後日も、それから先もずっと、ちゃんと生きて存在していくんです」






タグ:役所 小説
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