姉 [小説]
僕の姉は、変わっています。
雨の日には、わざと傘をささず濡れて帰ってきます。
お腹がすくと、踊り出します。
自分には甘いけど、他人には厳しいです。
友達があまりいません。
勉強が不得意です。
でも、絵を描く事だけはとんでもなく秀でています。
僕は、そんな姉が嫌いでした。
姉が恥ずかしかったです。
姉をみかけても、なるべく他人のフリをするようにしていました。
僕に恥ずかしい思いをさせる姉が嫌いだったからです。
僕は、体が弱いです。
小さい頃から入院がちでした。
貧血になりやすいです。
今日は、僕が倒れた事がひどく大事になってしまいました。
隣に寝ている姉の顔は、少し疲れているようでした。
僕は、本当は知っていました。
僕の母は厳しい。
だから、僕が雨の日に、少しでも濡れて帰ると怒られます。
しかし、僕が怒られないように姉がわざと濡れていたことを。
踊り出すのは、僕が小さい頃に姉の踊りをみて笑ったので、僕に笑ってほしいからだということを。
確かに他人には厳しかった。
しかし、僕にはとんでもなく優しかったことを。
誰よりも友達を欲しがっていたことを。
誰よりも努力していたことを。
得意な絵を僕をモデルに描いて、それが入賞したことを。
僕は、本当は全部知っていました。
しかし、周囲の視線ばかりきにして姉を姉として見てきませんでした。
だから、僕は弟なんかではありませんでした。
弟失格でした。
それなのに
姉は僕に輸血してくれました。
ありがとう。
ありがとう。
そう思うと、何とも言えない
申し訳ないような
悲しいような
悔しいような涙が出ました。
格好悪い顔で隣に寝ている姉をみました。
変わっている姉の寝相は、やはり、変わっていました。
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