SSブログ
 
 

ドラゴン [小説]


 

10603686_352635711570119_1133447658042105998_n.jpg

俺は誰と馴れ合うでもなく、毎日毎日 ヘッドホンで耳をふさいで、孤独に酔っていた。


ちょうど 1人で食べる昼食にも慣れた頃、するべきことをすませた後のトイレの鏡の前でぎょっとした。


背中を覆うほどの大きさのドラゴンが、俺の肩に掴まって、こっちを睨んでいたからだ。



それでいいのか?

と、言いたげな目をしたドラゴンは、体を触らせてはくれなかった。



あんまり友達ができないものだから、俺の脳はとうとう、孤独を具現化して馴れ合うことを始めたらしい。


惨めだ。


すごく惨めだ。

孤独はすぐ近くにいるけれど、これと馴れ合うのはかなりまずいことになるのを、俺はよく知っていたからだ。

畜生 いいわけないだろう、俺もドラゴンを睨んでやる。


結局 友達らしい友達も出来ず、ただ 成績だけは人一倍よかったから、卒業して、そこそこいい会社に就職した。

通勤電車の中、俺は相変わらずヘッドホンで耳をふさいで、孤独を気取っていた。


ガラス越しに、似合わないスーツ姿でつり革に掴まる俺と、その肩に掴まっているドラゴンが写る。


いいのかよ、それで?

と、相変わらずドラゴンは冷ややかな目をしている。


畜生 学生に戻りたいよ。


俺はちょっと弱気な目でドラゴンを見つめる。


そういえば、少しドラゴンが大きくなったような気がする。






nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

トラックバックの受付は締め切りました

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。