ドラゴン [小説]
俺は誰と馴れ合うでもなく、毎日毎日 ヘッドホンで耳をふさいで、孤独に酔っていた。
ちょうど 1人で食べる昼食にも慣れた頃、するべきことをすませた後のトイレの鏡の前でぎょっとした。
背中を覆うほどの大きさのドラゴンが、俺の肩に掴まって、こっちを睨んでいたからだ。
それでいいのか?
と、言いたげな目をしたドラゴンは、体を触らせてはくれなかった。
あんまり友達ができないものだから、俺の脳はとうとう、孤独を具現化して馴れ合うことを始めたらしい。
惨めだ。
すごく惨めだ。
孤独はすぐ近くにいるけれど、これと馴れ合うのはかなりまずいことになるのを、俺はよく知っていたからだ。
畜生 いいわけないだろう、俺もドラゴンを睨んでやる。
結局 友達らしい友達も出来ず、ただ 成績だけは人一倍よかったから、卒業して、そこそこいい会社に就職した。
通勤電車の中、俺は相変わらずヘッドホンで耳をふさいで、孤独を気取っていた。
ガラス越しに、似合わないスーツ姿でつり革に掴まる俺と、その肩に掴まっているドラゴンが写る。
いいのかよ、それで?
と、相変わらずドラゴンは冷ややかな目をしている。
畜生 学生に戻りたいよ。
俺はちょっと弱気な目でドラゴンを見つめる。
そういえば、少しドラゴンが大きくなったような気がする。
2015-07-03 03:14
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