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来世のプラン [小説]

 

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いらっしゃい『あの世』へようこそ!


どうしたんだい?

生前の記憶はまだ残っているかい?


うん!そうなんだ君は死んでしまったんだ。


まぁ落ち着いて僕の話を聞いてくれるかい?


すまない、自己紹介が遅れたね!


初めまして!

僕は神だ!

そう言った方が、これから話す事に納得してもらえると思うから、ここは敢えて神と名乗らせて貰うね!



さぁ!ここからが、本題だ。


今、君が居るこの世界だが、実は君が暮らしていた世界とそう変わらない。


この画面を良く見てくれ、このままじゃちょっとわかりずらいかな拡大してみよう。


こうやってクリックして拡大するとほら

これが君が暮らしていた地球だ。


驚いたかい?


君たち、いや君たちが生活していた世界は僕が作ったこのパソコンの中のプログラムなんだ。


さて君は生前願ったよね?


その君の願いを、ここにいくつかプランとして僕が作ってみたんだ。


どうだい?どれも魅力的だろ?


さぁ、早く選んで。


次は『どの世界』にするんだい?


大丈夫、ちゃんと今の記憶は全てきっちりデリートされるよ。


よし決まったね。


それでは最後の確認だ。


次は『この世界』で間違いないかな?


それではいってらっしゃい。


タグ:来世 小説

プラネタリウム [小説]

 

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僕は星を見るのが好きだった


近所にあった小さなプラネタリウム


親戚のおじさんのプラネタリウム


暇さえあれば何度でも通っておじさんに見せてもらっていた



「そんなに星が好きかい?」


ある時おじさんは聞いた


「うん。だってきれーなんだもん」


おじさんは嬉しそうに微笑んだ


あの日から数十年・・・


私はあのプラネタリウムにいる


親戚の子供がやってくる


貸切のプラネタリウム


「そんなに星が好きかい?」


ある時私は聞いた


「うん。だってきれいだから!」


親戚の子供の言葉に私はやさしく微笑んだ


丁度あの頃のおじさんの様に・・・


神と懺悔 [小説]

 

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私は手にしていた分厚い革表紙の本を棚に戻した。


私はどこまでも続く本棚の間の通路を歩く。



人が二人通れるくらいの幅のそれは、時に左に、右に曲がりながら、

またある時は他の通路と交わりながらつづく。

平面だけではない。


所々にある階段が、書架の迷宮に縦の広がりをあたえている。


私はずっとここにいる。


今まで誰ともあったことはないし、そもそも誰もいないのかもしれない。


私はただ、そこにある本を読んだ。



誰が書いたかも分からない妖精や竜の出てくるおとぎ話、


宇宙の真理を探求した哲学者の記した古書、


神を言語で表そうとした詩人の記した黒い背表紙の本、



私はただ読んだ。


私の中にはあらゆる知識があった。



読めば読むほど、それは際限なく膨らんでゆく。


いつか私は、全てを知るのだろうか。


私はずっとここで一人。


全てを知るまで、ここを出ることはないのだろう。


あらゆる知識をもつ存在。


人はそれを神と呼ぶ。


全てを知ってしまえば私はもう人ではいられないのだろうか。


神などとはおこがましい。


どれだけ本を読もうとも、

どれだけの真理を知ろうとも、

この頬を伝う涙の意味すら分からないのに。


タグ: 小説

役所仕事 [小説]

 

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一日の終わりには、あの人の所へ印をもらいに行く。



「今晩は」



「今晩は、いらっしゃい」


と私たちはいつもの挨拶を交わす。


あの人は「お茶はいかが?」と勧めてくれる。


私が眠れなくなるといけないからと、それは決まって焙じたものだ。


少し世間話などをした後で、私たちは姿勢を正し、小さなテーブルを挟んで型通りのやり取りを始める。



「私は、今日も一日、確かに生きて存在してたんでしょうか?」

申し訳ないような気持ちで、私が気まずい質問を切り出す。



「ええ、もちろん」

と、あの人はきっと何気なくそう言って、私の手帳の上に顔をふせ。


力の限りを込めて

念入りに

慎重に

でも向きなんかにはあまり頓着なく、

しっかりと今日の印を押してくれる。


「はい、おしまい」

あの人は顔を上げ、無邪気な表情で手帳を差し出し。



「昨日も一昨日も今日も、あなたは確かにいましたよ。そして明日も明後日も、それから先もずっと、ちゃんと生きて存在していくんです」


タグ:役所 小説

変なオジサン [小説]

 

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もしもしそこへ行く若い人、あなたじゃ、あなたじゃよ。



あなたにとてもおいしい話あるよ。
 

俺は突然、変な爺に話しかけられたと思い、後ろを振り向いた。


俺か、俺のことか。


そうじゃ、あなたの他に誰がおる。


俺は回りを見たがその変な爺の他には俺しかいない。


何だ、爺さん。


あなたにとてもいい物上げるよ。


この金の延べ棒と、先々自分の身に起こることを知る力だよ。

欲しいだろう。
 

俺は爺さんの言うことを聞いたさ。


だって得だもん。


金の延べ棒と、先々俺の身に起こることを知る力だって言うんだからさ。
 

でも金の延べ棒を貰った瞬間、俺はぞっとしたんだよ。


確かに自分の身に起こることが分かってさ。


俺は明日死ぬってことが体の底からはっきり分かったんだよ。  

俺は焦って、爺さんを探したんだけど、もう姿が見えないんだよ。


俺が皆に言えるのはたった今だけさ。

明日は俺のお通夜だよ
 .

だからさ、俺が言いたいのは、おいしい話にゃ気を付けろってことだよ。


でも金の延べ棒はおふくろにプレゼントするよ。


ホームレスと大金 [小説]

 

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「えらい物を拾ってしまった・・・」
 

彼は、2千万円の札束を小さなテーブルに広げて頭を抱えた。


彼はホームレスだ。


会社をリストラされ、妻子にも縁を切られていた。

橋の下にビニールシトで覆った住まいを作り、ゴミ置き場から生活に必要な物を運び込んだ。


鍋や小型ラジオだってある。


食べ物は、コンビニやレストランから出た廃棄物から何とか調達出来た。


アルミ缶などをかき集めると、多少の金にもなった。


少しばかり家の中が煙いのを我慢すれば、それなりに快適だった。


その日の早朝、彼はゴミ置き場をあさった。


紙袋が目に入った。


中をあらためると、新聞紙に包まれた札束が出てきた。


慌てて周囲を窺ったが、人の気配はなかった。

彼は急いでそれを持ち帰った。
 

新聞紙に包んだ大金を紙袋に入れて持ち歩くわけがない。

出所を明らかに出来ない金を、持ち主が始末に困って捨てたのだ。


彼はそんな風に解釈した。
 

これだけの金があれば、立派なアパートに住み、フカフカなフトンにも寝られる。


まともな職にありつけるチャンスだってある。

人並みの社会人として生活出来るのだ。
 

しかし、と彼は思った。

背広を着れば、また会社の規則や社会の決め事に縛られることになる。

自分は、もうそのことに妥協出来ないのではないか? 


今の生活は貧乏でも自由がある。

彼は考え込んだ。


翌日早朝、彼は金が入った紙袋をもとのゴミ置き場に戻したのだった。


極楽で御座います [小説]

 

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ここは美しい極楽で御座います。


何時ものようにお釈迦様は青い玉のような花をつけた水蓮の池の前で佇んでいらっしゃいます。
 

すると、裏口から血の池地獄の使いだと言う鬼が二匹お釈迦様の前に現れたので御座います。


「お釈迦様、困ります。勝手に銀の糸をお垂らしになり、罪人を逃がそうなどとされては」

と鬼壱がそう言われたのです。


「あのことで多くの罪人が動揺し、血の池の管理が難しくなっているのです」

鬼弐がそう言われました。


「そう言われてもなあ、いわゆるひとつの報恩だよ」



「いずれにしましても一度地獄の方にご足労願わにゃなりませんな。」



と鬼壱が言われると


「それじゃ失礼ですが御両手を前に」


と鬼弐が腰巻から手錠を取り出して言われるのです。


「おい、おいこれじゃ本当のおしゃかしゃまだよ」


とお釈迦様はやや渋い顔をされて仰られました。



水蓮の玉のような青いい花の上で御腹の虫もくるる、くるると鳴いているところを見ると極楽もそろそろお昼のようで御座います。


タグ:小説 極楽

何故? [小説]

 

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謎を増やすことを楽しむ少年は、いつも何かに謎かけしてた。


「此れは如何して青いの? そもそもどうしてこの色が"あお"なの?」



赤じゃ駄目だったのか、少年の謎解きが始まる。


如何して"あお"なのか。

誰にも分からない。


そう気付いても、少年は謎解きをするのを止めようとはしなかった。


「如何して空は青いの? そもそも如何して空は"そら"っていうの?」

海も"あおい"けど、空と海が逆の呼び名じゃ駄目だったの?


少年は沢山謎解きをした。


何故?

其れが楽しかったからさ。


少年はやがて大人になった。


「どうして? どうして?」が口癖の。



謎を増やすことを楽しむ少年は、そんな科学者になった。


コーヒーと思惑 [小説]

 

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客のまばらなカフェに入り、僕はカウンターで店員を待った。


奥で店員である若い女が電話している。
 

その日は不思議と、不機嫌にはならなかった。
 

こちらに気付き、電話を切って足早に僕に近づいた彼女の目元が微かに濡れていた。


見られたと悟った彼女は綺麗な指先で拭った。



「大丈夫ですか」
 

潤んだ瞳を見つめて僕は言った。



「ええ、平気です」
 

無理に微笑んで彼女は言った。


コーヒーを注文した。


彼女はコーヒーを洒落た紙コップに注いで差し出した。


一口飲む。


今日のはとくべつ苦い。


傍にあった透明のボトルには砂糖が詰まっている。

僕は手に取る。
 

突然ボトルの蓋がはずれて、大量の砂糖が熱いコーヒーに飲まれていった。
 

大袈裟に驚いて見せた。


カフェの女が少し笑って新しいコーヒーを淹れようとした。


笑顔はやっぱり素敵だった。
 

だから僕はこのコーヒーでいいと笑顔で言う。


今日のはとくべつ甘くなった。


それが甘くなることを僕は知っていた。
 

彼女がコーヒーを注いでいる間、ボトルの蓋を緩めたのは僕だったから。


小説 [小説]

 

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何故小説は長くないとイケナイのだろうか?


其れはみんなが長く書くからである。


何故みんなが正しいのか?


みんな同じだから。


みんな同じなの?


みんな同じでは無い。


「でもみんな同じになる様に努力するんだよ」


何で?


みんな怖いから。


それじゃあ小説は長くなくても正解だという事だ


みんなが作らない物を作った、此れは芸術である。


でも、階段は登らないとイケナインダ


足しか持ってないから階段を登らないと上に行けないし


歩かないと先に進めない。


歩く事は正しくないんだよ


本当は正しい歩き方があったのかも知れない


でもみんな歩くから僕も歩くんだ


だって人間だから、


何も変わらないよ


タグ:小説

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