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真っ赤な手帳 [小説]


 

 

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トントンと響く包丁の音。



台所では可愛らしい妻が、夕食の準備をしていた。




「ねぇ、今日は何の日か覚えてる?」



料理を手にリビングに戻ってきた妻が、唐突に聞いてきた。



「えーっと、初めて二人でドライブに行った日はこないだだったし、なんだったかな?」

本当はすぐに答えなんて分かっていた。



妻の少しすねた顔が見たかっただけなのは内緒にしておこう。




「……あ、そうか。今日は君と初めてキスした日だ」



ぱっと妻の顔が明るくなる。




「ほら、見て見て」

妻が自分の手帳のカレンダーを見せてくれると、そこには数字につけられた赤い丸とともに、赤い文字で確かにそう書いてあった。




「明後日は初めて二人でつりに行った日だから、早く帰ってきてね。魚料理がんばっちゃうから」

そんな生活が続いた。。。



やがて

2年も経つ頃には、妻の手帳は隙間が無い程、真っ赤になっていた。




「ねぇ、今日は何の日か覚えてる?」



「覚えてるでしょ。。だって、記念日ですもの。。。」



毎日かかってくる妻からの電話は、決まってその言葉から始まる。




すぐに返答できたのは最初だけの話で、今では妻からの電話におびえる日々。




あの手帳さえなければ。。



あの、赤い手帳さえ。。。






タグ:新婚 手帳 小説
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