SSブログ
 
 

ポリスBOX [小説]


 

 

 10488346_318752468291777_1777829044769081138_n.jpg 

 やっと見つけた交番に駆け込む。




「どういったご用件でしょうか?」



パソコン画面の警察官が機械的な声で聞いてくる。




「IDスティックをなくしてしまって……」



「何か身分を証明するものをお持ちでしょうか?」



彼は首を振る。




IDスティックとは、手のひらに収まるサイズの棒状の多機能モジュール。




身分証明書になるだけではなく、財布や鍵、電話の機能など

生活に必要な機能すべてがIDスティックに入っているのだ。





それ一つですべてのことが足りる以上、他のものなどもっているはずなどなかった。



「誰か、あなたの身元を確認できる人はいますか?」



彼は首を振る。




連絡を取ろうにも、今どき他人の連絡先を脳に刻み込んでいる人間などいない。



IDスティックにのみそれが記憶されているのだから、友人はもちろん、親にさえ連絡が取れなかった。




「身分を確認できないため、市民権なしと判断させて頂きます」



それだけいうと、ディスプレイの電源がぷちっと消える。



市民権がない以上、彼は『存在しない』と判断されてしまったのだ。



「おい、待ってくれよ!」




しかし彼が何を言っても、もはやディスプレイは何の反応も示さない。




黒い画面には、ただ彼の青白い顔だけが映されていた。






タグ:警察 小説
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

トラックバックの受付は締め切りました

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。