セツナ [小説]
「ビール冷えてる?お、入ってる入ってる」
「グラス忘れてない?グラスが冷えてなきゃ台無しなんだよなー」
「よいしょっと」
トクトクトクトク
グビッ。。
ぷはぁー
「ん、どうした。。お前?今日はやけに静かじゃないか」
「俺か? そうなんだよ、今日も大変だったんだぜ」
「まったく毎日毎日参るよ。。」
「ん、どうした? そんなに冷たい頬をして」
私は写真立ての中で微笑む妻の頬に、そっと手を触れた。
冷えたガラスの感触が、指先を通して心に突き刺さる。
私の言葉に優しく相槌を打ってくれた妻はもういない。
今日も散らかったダイニングに響くのは、ただ私の独り言のみだった。
2015-05-30 01:00
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