遺言 [小説]
「私が死んだら、その灰を灰色の絵の具にして、私の肖像画を描いてほしい」
そう言い残して、夫はこの世から去った。
私は遺言通り、絵の具を準備して、有名な画家に肖像画を頼んだ。
ただ、気味悪がって断られると思い、灰色の絵の具のことは黙っておいた。
やがて肖像画が完成し、家に飾ることにした。
しかしそれからというもの、夜中に声が聞こえたり、
肖像画の顔つきが変わったりなどと、家族が気味悪がるようになった。
他に相談できる人もいないので、画家にすべてを打ち明け、どうすればよいか尋ねた。
すると画家は考え込んで、こう言った。
「おかしいですねぇ。灰色は使わなかったのですが‥」
2015-06-03 02:22
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