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彼女の優しさ [小説]


 

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「そこまでして、やらなくちゃいけない事なの?」


彼女の言葉はとても優しい。


僕はその言葉に溺れそうになるけど、どうしてもそうする訳にはいかない。


彼女の純粋な思いに甘えたいのは山々だけど、どうしてもやらなければならない事がある。


それは誰に強制されている訳でもない。


だけど今の僕にとって、何よりも大事なことだ。


彼女だってそれは解っていると思う。

それでも。


それでもやはり言わずにはいられないのだと思う。


僕はその気持に感謝する。


やめることは簡単で、その瞬間僕は楽になれる。


そして同時に大きなものを失ってしまう。


心の一部。


存在の理由。


大げさかもしれないけれど、特別な事じゃない。


何かを目指してしまった者なら、誰にでもあるものだ。



もし今この時に、君の言葉に全てを委ねてしまったとしたら。



僕は心の空洞に巨大な虚無を抱えたまま、いつまでも君の優しさを求めてしまうと思うんだ。

それはきっと近い将来、終わりのない絶望と変わらなくなってしまう。
 

だから今だけは、君の優しさを受け入れる事が出来ないんだ。



ごめんね、でもありがとう。






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