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驚異的な視力 [小説]


 

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大学病院の眼科には今日もたくさんの人が来ていた。


新聞を読みながら、周囲と自分の境界に見えない壁を作る男。


待ち時間が長すぎると言って、周囲にイライラを吐き出す女。


自由に走り回り、追いかけてくる母親の目を回す女の子。


いつもだったら見慣れた風景で疑いのない空間だ。



ところが診察室から出てくると、私の現実が見る見る崩れだした。



透明だったはずの空間にヒビが入り、コップが割れる音がした。

新聞を読んでいた男の前には、コンクリートの壁が出現し

女のイライラが、針になって病院中を飛び回っているではないか。


走り回る子どもの目の前には草原が広がり母親は小さな彼女の瞳の中だ。
 

これが、視力7.0の世界らしい。


慣れるまでは大変らしいが、素敵な世界だ。


もちろん鏡を見るまでの世界だったのだが。






タグ:視力 眼科 小説
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