花 [小説]
世界から花を愛する文化が消えようとしていた。
人工物の方が花より綺麗だから。
だから、人は選んだ。
花など、遺伝子だけ残して、全滅させてしまうと。
そして、造花がつくられた。
世話のかからない花。
絶対に枯れたりしない花。
未来にふさわしい花。
その造花が、なぜか壊されたのに復元されていく。
どこかにいる魔術師が花を守るために、勘違いして。
すべての造花を生き返らせているのだという。
ああ、
わたしのまわりにあったすべての天然の花がいっせいに枯れ。
すべての造花が咲き誇る。
その造花は一瞬で枯れ果ててしまい、涙するわたしを包みこむように、造花が蘇生していった。
輝く星空よりも綺麗な、進化の法則でつくられた異物を魅了するための機能、花。
そして、人類の最後には、天然ものの花がいっせいに咲き誇った。
人類を称える花も、人類を軽蔑する花も、みんなが一体となって、咲き誇った。
人類は天然物の仲間だから。
2015-06-07 01:45
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