幸せ [小説]
幸せ者が幸せ者なのは、彼がすでに幸せ者であるからで
不幸な人が不幸なのは、彼がすでに不幸だからだ。
その人が幸せになるかどうかは、生まれる前に決まっている。
少しだけ思い出してみてほしい。
この世に生まれる前に、長い列に並んだ覚えはないだろうか。
角の生えた人々から、黄色い球、あるいは青い球を受け取った記憶があるはずだ。
それが幸せだ。
あるいは、不幸。
一度もらってしまったが最後、返すことはできない。
少しだけ試してみてほしい。
胸郭の中から心臓を引っ張り出して、裏っかえしてみてくれないだろうか。
脈打つ筋肉の裏に星形の刺繍、あるいは月型の刺繍が見えるはずだ。
それが幸せだ。
あるいは、不幸。
一度縫い止められてしまったが最後、ほどくことはできない
私たちが幸せになるかどうかは、生まれる前に決まっている。
変えることはできない。
だけど、強がることはできる。
自分は幸せ者だ。幸せな運命の元に生まれついたんだ。
そんな風にうそぶいて、上機嫌に暮らすことが、いつだって。
2015-06-16 00:50
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