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桶屋 [小説]


 

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風が吹けば桶屋が儲かるということわざがある。

あることが起こると、それと一切関係ないあることが起きるという例えだ。


彼はそれが例え話だと知りながも実際に風が吹くと、どのように桶屋が儲かるのかを知りたくなった。



まったく知りたがりな男である。


そこで、彼は桶屋に張り込み、風吹くのを待った。


2時間ほどしたころだろうか。


突然、大きな風が商店街のアーケードに吹き渡ったのだ。


風が吹くと同時に道端の新聞が飛ぶ。


それが中年サラリーマンの顔に付いて、自転車がよろける。


そして女にぶつかりそうになる。



女は驚き、自分のハンカチを放る。


それが水たまりの落ちる。


「何かを使って洗いたい」女が桶屋を見て言う。


「そういうことか。桶を使ってハンカチを洗うのか。」

と彼はやっと分かる。



泥にまみれたハンカチを彼は拾い、女に渡そうとする。


彼は向こうからきたトラックに気づかない。


町に金属の鈍い音が響く…。


桶屋に棺桶の注文が入ったのは、その翌日のことである。






タグ:桶屋 小説
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