桶屋 [小説]
風が吹けば桶屋が儲かるということわざがある。
あることが起こると、それと一切関係ないあることが起きるという例えだ。
彼はそれが例え話だと知りながも実際に風が吹くと、どのように桶屋が儲かるのかを知りたくなった。
まったく知りたがりな男である。
そこで、彼は桶屋に張り込み、風吹くのを待った。
2時間ほどしたころだろうか。
突然、大きな風が商店街のアーケードに吹き渡ったのだ。
風が吹くと同時に道端の新聞が飛ぶ。
それが中年サラリーマンの顔に付いて、自転車がよろける。
そして女にぶつかりそうになる。
女は驚き、自分のハンカチを放る。
それが水たまりの落ちる。
「何かを使って洗いたい」女が桶屋を見て言う。
「そういうことか。桶を使ってハンカチを洗うのか。」
と彼はやっと分かる。
泥にまみれたハンカチを彼は拾い、女に渡そうとする。
彼は向こうからきたトラックに気づかない。
町に金属の鈍い音が響く…。
桶屋に棺桶の注文が入ったのは、その翌日のことである。
2015-06-16 00:55
nice!(0)
コメント(0)
トラックバック(0)
コメント 0