紅葉と妻の死因 [小説]
もう 夏は終わろうとしている。
私がこの山に来るのは2年ぶりだろうか?
まるで深海のような空の下
今年は この山の木の前に立っている。
冷えた空気の中では
樹の匂いが心地よい
この木を見ても
もう妻のことは思い出さない。
赤オレンジの紅葉をつけ
この山を彩る色素の一部
埋めた妻の栄養を得て
薄い赤色の葉をつける木
その紅葉を見て 私は
ただただ 秋がきたのだと思うことだろう。
この手で絞めた感触も
もはや私には無い
幹の切れ目に
妻の時計をねじ込んで
私は夏の終わりを感じながら山を後にした。
2015-06-16 01:01
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