ネガティブな旅立ち [小説]
旅立つ人、見送る人
どっちがつらい、どっちが痛い?
僕には進む強さも、待つ優しさも無く
敷かれた白線の手前で持ち上げた足を、
踏み込む事も戻す事も出来ず
「行動を起こした先の自分」を語っては、今の姿込みで苛立ちに舌を打つ
「切符が発行されなければ、鞄に詰めた白紙と、筆箱の中にしっかり入れてある鉛筆で、行き先を明確に記せばいいじゃないか」
当たり前のように、遙か先に立つ友人は言う
行き先が、分からないんだ
不機嫌に訴えてみたが、それこそ当然のように友人は告げる
「教科書に書いてあっただろう」
生き方、考え方は全部、教科書に載っていた。
その通りに生きれば、それは素晴らしいと褒められ
それに反すれば、あいつはダメだと罵られる
確かに僕も習った
でも、僕は当時から出来が悪く、物覚えも悪かったから、教科書の内容を殆ど覚えていなかった
せんせいの教え方が悪かったんだよ
投げやりに放った言葉に「人のせいにするなよ」と、恐らくその友人ではなくても
誰でも言いそうな言葉が返ってきた
そうだね
僕の声は友人には届かなかった
友人はすでに「前」を向き、背筋を伸ばして歩き出していたから
切符の話で、僕が「そうだね」と言っていたら、友人はなんと答えただろうか
未だに宙をさまようつま先
その話も込みで、もう一度、舌を打った
2015-06-16 01:08
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