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卵 [小説]


 

 

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 「これなんかどう?」



仲睦まじげな若い夫婦が、奥まった棚の前で足を止めていた。



夫が棚に置かれた一つを手にして、妻に聞く。




「う~ん、やっぱり国産がいいかなぁ」



しかし彼女はいまいちのようだった。



ここは、卵の専門店。



丁寧に梱包された商品には産地や成分表示もしっかりと書かれていた。




「最近は外国産のも、けっこういいって話だぞ」



「だってぇ」




彼女の主張は強く、彼も仕方ないなといった風に肩をすくめた。




「じゃ、あっちの遺伝子組み換えのやつは?」



「あ、それがいいかも」



今度は彼女も乗り気のようだった。



つい先日も新しい遺伝子組み換えの卵が開発されたと、CMでやっていたばかりだ。


彼女の中には、その印象が強く残っているのだろう。



「スポーツが得意な子も捨てがたいけど、芸術家なんてのもいいわよねぇ」




「俺はとにかく、元気な子がいいな」



自然配合の卵もいいが、やはり優秀なものも魅力的だった。




明るい未来の家庭を想像して、二人は少し遠い目をする。



2時間ほど経過した頃、二人の間で一つの結論が出た。



「じゃ、この受精卵でいいよな?」



パッケージには<国産・遺伝子組み換え(スポーツ)・温厚・誠実>と表示されていた。




「うん」

仲良く腕を組みながら、若い夫婦は選んだ卵を愛おしそうに抱えてレジへと向かっていった。






タグ: 避妊 小説
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