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ベイビーベイビー [小説]


 

 

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それは3年前のこと。



やっと慣れ始めた仕事からの帰り道、道端の毛布に包まれたそれを見つけた。


不思議に思って中を覗いてみると、赤ん坊がすやすやと眠っているじゃないか。



慌てて拾い上げると、すぐさま交番へと駆け込んだ。



「す、すいません!」



中では年配の警官が一人、椅子に座っていた。



慌てながら事情を話す私とは対照的に、彼はいたって落ち着き払っていた。




「では、この書類を書いて下さい」



渡された紙には、なぜか『拾得物』の文字が。




戸惑いを覚えながらも、そういうものなんだと素直に従って書いていると、若い女性が交番に飛び込んできた。




「赤ん坊がいなくなったんです!」



興奮した様子で話し始める彼女。


まとまりに欠ける話だったが、その内容からするとどうやらこの赤ん坊の母親らしい。


無事見つかったこともあって、私はほっと胸をなでおろした。




これで安心して家に帰れる、そう思っていたのだが……




「届けてくれた彼に、謝礼として1割をあげないといけませんよ」




いきなり、年配の警官がそんな事を言い出す。




言われて彼女も、私の手をぎゅっと握ったかと思うと懇願するような目で見つめてきた。



「1割といわず、5割もらってもらえますか?」



「え、ああ……」



勢いに押されたこともあり、思わずあいまいに返事をしてしまう。




それがすべての始まりだった。




「じゃあ、こっちの書類も書いてもらわないと」



年配の警官が、ごぞごそと引き出しから2枚の紙を取り出す。




今度は養子縁組の書類と婚姻届を手渡された。



勢いに押され、言われるままに書類の空欄を埋めていく。



こうして私は一児の父親になっていた。



そして3年が過ぎ、隣では寝息を立てながら、すやすやと息子が眠っていた。



その横では、今日も育児に疲れたのだろう。




妻もぐっすりと眠っていた。




二人の寝顔を眺めていた私の頬が自然と緩む。



運命とは奇なものだ。






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