介護ロボット [小説]
弁護士が、遺言書を読み上げる。
「寝たきりの私に10年も仕えてくれた、介護専用ロボットの彼女に全財産を譲る」
部屋全体が殺伐とした空気に包まれる。
「ロボットに全財産だと?馬鹿な」
「最初から遺産目当てで近づいたんだろ」
弁護士も応戦する。
「しかし、遺言書に書かれていることは絶対ですから」
身内一同、またそれに反論。
「肉親を差し置いて、何を言ってやがる!」
「本当に、その遺言書には効力があるのか?」
…いったい、お葬式で流したあの涙はなんだったのだろう?
恥ずかしい。
となりで座っていた彼女は、頭を下げながらジッと耐えている。
なんだかかわいそうだ。
「人間は勝手だよな、嫌な仕事を全部キミに押し付けて。キミももっと言い返していいんだよ」
彼女は、声のボリュームを「1」にして言った。
「介護ロボに、怒りの感情は最初から組み込まれていないのです」
そうだったのか。
「だから、気難しいおじいちゃんにも長年仕えることができたんだね。ところで、遺産をもらうとしたらどう使うつもり?」
「福祉センターを創りたいと思っています。まずは、最新型の介護専用ロボットをそろえようかなと」
えらいなあ。
「僕は、キミと同型のロボットでも、
充分な働きをしてくれると思うけれどね」
「いえ、私なんてまだまだです。。最新のロボットは、筆跡だけでなく指紋まで完璧なんですよ」
2015-06-03 02:42
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