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介護ロボット [小説]


 

 

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弁護士が、遺言書を読み上げる。



「寝たきりの私に10年も仕えてくれた、介護専用ロボットの彼女に全財産を譲る」

部屋全体が殺伐とした空気に包まれる。



「ロボットに全財産だと?馬鹿な」



「最初から遺産目当てで近づいたんだろ」


弁護士も応戦する。



「しかし、遺言書に書かれていることは絶対ですから」

身内一同、またそれに反論。


「肉親を差し置いて、何を言ってやがる!」



「本当に、その遺言書には効力があるのか?」

…いったい、お葬式で流したあの涙はなんだったのだろう?

恥ずかしい。


となりで座っていた彼女は、頭を下げながらジッと耐えている。


なんだかかわいそうだ。



「人間は勝手だよな、嫌な仕事を全部キミに押し付けて。キミももっと言い返していいんだよ」

彼女は、声のボリュームを「1」にして言った。


「介護ロボに、怒りの感情は最初から組み込まれていないのです」

そうだったのか。


「だから、気難しいおじいちゃんにも長年仕えることができたんだね。ところで、遺産をもらうとしたらどう使うつもり?」


「福祉センターを創りたいと思っています。まずは、最新型の介護専用ロボットをそろえようかなと」

えらいなあ。



「僕は、キミと同型のロボットでも、
充分な働きをしてくれると思うけれどね」



「いえ、私なんてまだまだです。。最新のロボットは、筆跡だけでなく指紋まで完璧なんですよ」






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