別れ話 [小説]
「別れてくれ」
彼から別れを切り出された時、私の心は引き裂かれ、体がばらばらになったようだった。
「もう、君と一緒にいることが耐えられないんだ」
彼は、そう言うと立ち上がり、私の部屋を出て行こうとした。
私の右手が彼の左手首をつかんだ。
「行かないで!」
私の左手が彼の右脚をつかんで引っ張り、彼を横倒しにした。
私の左脚が彼の首を押えこみ彼の動きを封じた。
私の右脚は玄関に走って行き彼の靴の片方に跳び込み、私の胴体は彼の退出を阻むべくドアの前で仁王立ちになった。
私は顔だけテーブルに載せて彼を睨みつけて、こう言った。
「ぜったい、別れてやらない! 」
ほんとうに苦しくて、私は心が鬼と化し、体がばらばらになっていた。
2015-06-14 07:06
nice!(0)
コメント(0)
トラックバック(0)
コメント 0