ナンパ [小説]
今日はとってもいい天気。
朝、はやくから釣りに出かけたよ。
あまり、魚は釣れなくてぼくはしょんぼり。
魚が釣れないなら、女の子を釣ろうと歓楽街へ。
何時間も電車を乗り継いで、ようやく到着。
歓楽街は釣れそうな女の子が、「街という空間」をたくさん泳いでいる。
その街で時間をかけて、何度も女の子の釣りをしていたのだが、みんなかかりそうでいて、すれなく逃げていく。
なかには、「気持ち悪い」とか、「一人であそんでろ!」とか、暴言を吐いて目の前から消えていく。
またまたしょんぼり。
もうやめようかと思ってたら、個室ビデオから女の子が出てきた。
顔をみたら、驚いた。
きれいな子だ。
声をかけたら、すんなりうなずいてくれて、ぼくは有頂天!
女の子の釣りにようやく成功したんだ。
長い長い戦いだった。
ぼくは幸福な気持ちでおなかいっぱいになった。
でも、よく見たら女装した男だった。
な~んだ。
さえないにもほどがあるってもんだ。
人ゴミの中に逃そうと思った。
その時、彼女がぼくに言った。
「あら・・・・、こんなところであなたに釣られるなんて」
そんな声をかけてくれるところから推測すると、おそらく知り合いだ。
よくよく見たら、ぼくの同級生で男友達だ。
あわてて、ぼくは歓楽街を逃げた。
女の子を釣るつもりで、男の子に釣られるなんて。
それも同級生。
世の中は狭いなあ。
家に帰ってから、ぼくは思い出して
ちょっとだけ、笑ってしまったよ。
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