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おじさんとラジオ [小説]


 

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僕のおじさんはいつもラジオをいじってる


朝から晩までチューンを合わせる


ザーザーピーピー うるさい


おじさんは言う


「違うんだよ ぜんぜん このラジオは 特別だ」



僕が、そのラジオのどこが特別なのか訊くとおじさんは、感度が特別なのだと言う。



「コイツは、特殊な電磁波をキャッチ出来るんだ。時間軸を超えてやってくる電磁波までもな。」


おじさんはそう言って、手先に集中する。


「俺が作ったラジオだ。23から始めて今年で60になる」



「人には色んなアンテナが必要なんだ。
俺にも、アンタにも。そのために俺はコレを作ってきた。・・・あのひとの ほんとうを知るために。」


おじさんの手はダイヤルを回しつづける


「やった!ついにチューンが合ったぞ 37年前の午後3時15分。あとは彼女の脳波に合わせれば聴こえるはずだ!あのときの彼女の心の声が!」


でも ラジオは相変わらず ザーザービリビリいってる


ぜんぜん なんにも聴こえない

・・・なぜだ?こんなはずではない!

俺の37年は無駄だったのか?


僕は、地面に倒れ込んだおじさんを抱えて起こしてやろうとした


そのときだった

ラジオの雑音は なにやらモゴモゴし始めて

意味をもった微かな音声なって

おじさんの37年間を駆け抜けた


「・・・アナタ ナンテ キライ・・・」






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