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神と懺悔 [小説]


 

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私は手にしていた分厚い革表紙の本を棚に戻した。


私はどこまでも続く本棚の間の通路を歩く。



人が二人通れるくらいの幅のそれは、時に左に、右に曲がりながら、

またある時は他の通路と交わりながらつづく。

平面だけではない。


所々にある階段が、書架の迷宮に縦の広がりをあたえている。


私はずっとここにいる。


今まで誰ともあったことはないし、そもそも誰もいないのかもしれない。


私はただ、そこにある本を読んだ。



誰が書いたかも分からない妖精や竜の出てくるおとぎ話、


宇宙の真理を探求した哲学者の記した古書、


神を言語で表そうとした詩人の記した黒い背表紙の本、



私はただ読んだ。


私の中にはあらゆる知識があった。



読めば読むほど、それは際限なく膨らんでゆく。


いつか私は、全てを知るのだろうか。


私はずっとここで一人。


全てを知るまで、ここを出ることはないのだろう。


あらゆる知識をもつ存在。


人はそれを神と呼ぶ。


全てを知ってしまえば私はもう人ではいられないのだろうか。


神などとはおこがましい。


どれだけ本を読もうとも、

どれだけの真理を知ろうとも、

この頬を伝う涙の意味すら分からないのに。






タグ: 小説
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