殺人者 [小説]
遠い町で、殺人があった。
被害者は小さな女の子で、乱暴されて殺されたらしい。
すぐに捕まった犯人は、女の子とはなんの面識もなく、ただたまたま擦れ違っただけだとか。
動機を聞かれ、犯人は「ムシャクシャしてやった、誰でもよかった」と答えたそうだ。
そんなニュースを見た頃からだった。
酷い頭痛とそれによる吐き気、原因不明の高熱で、体が怠くて仕方がないのだ。
何度 病院に足を運んでも、原因が分からない。
薬も効かない。
意識朦朧としながら、俺は一人 自宅の布団の上で呻いていた。
このまま死ぬんじゃないだろうか、それほどの苦しみだった。
なんとか救急車を呼ぼうと、枕元に置いたはずの携帯電話に手を伸ばすが、どういった訳か、届かない。
まるで誰かがわざと遠ざけているようだ。
あまりの高熱に、幻覚でも見ているのかもしれない。
だけどもう、体力も意識も限界だった。
ぐったりと脱力したまま、意識を失いかけている俺に、どこからか可愛らしい声が聞こえた気がした。
「ごめんね、誰でもよかったんだけど……」
2015-07-03 02:54
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