みかん [小説]
私はみかんが好きだ。
子供の頃から好きで、冬になると親に止められるくらい食べていた。
こたつの上にみかんが積んであるのを見ると、それが尽きるまで食べる。
「食べなければいけない」のではく、「食べたい」のだから、余計に性質が悪い。
ある日、またみかんが積んであった。
こぼれそうなので、一つ食べた。
一つ食べたらもう止められない。
もう一つ、またもう一つと手が出る。
自分でも困ったもんだと思っているが、止まらない。
みかんが少なくなっていった。
あと五個ほど残った、もう一ついけるなと思って手に取ると、なんだか少し柔らかい部分があった。
みかんは青いくらいが調度良いと思っているので、それを食べるのを避けたかった。
他のを取ろうとすると、急にみかんの気持ちを考えてしまった。
「みかんだって、避けられるのは嫌だよなぁ。せっかく生まれてきたのに、ここで腐るのは嫌だよなぁ」
余計なお世話だろうか。
ただ、気になりだすと止まらない。
次々と手に取るみかんのようだ。
柔らかい部分もあったけれど、食べた。
甘いみかんが好きな人は、きっとこれを美味いと思うのだろう。
私は好きではなかった。
食べなければ良かっただろうか。
2015-07-03 02:56
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