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みかん [小説]


 

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私はみかんが好きだ。

子供の頃から好きで、冬になると親に止められるくらい食べていた。

こたつの上にみかんが積んであるのを見ると、それが尽きるまで食べる。


「食べなければいけない」のではく、「食べたい」のだから、余計に性質が悪い。
 


ある日、またみかんが積んであった。

こぼれそうなので、一つ食べた。



一つ食べたらもう止められない。


もう一つ、またもう一つと手が出る。


自分でも困ったもんだと思っているが、止まらない。


みかんが少なくなっていった。



あと五個ほど残った、もう一ついけるなと思って手に取ると、なんだか少し柔らかい部分があった。

みかんは青いくらいが調度良いと思っているので、それを食べるのを避けたかった。

他のを取ろうとすると、急にみかんの気持ちを考えてしまった。
 

「みかんだって、避けられるのは嫌だよなぁ。せっかく生まれてきたのに、ここで腐るのは嫌だよなぁ」



余計なお世話だろうか。


ただ、気になりだすと止まらない。

次々と手に取るみかんのようだ。
 

柔らかい部分もあったけれど、食べた。

甘いみかんが好きな人は、きっとこれを美味いと思うのだろう。


私は好きではなかった。


食べなければ良かっただろうか。






タグ:小説 みかん
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